子供の甲状腺がんが発見されたというのに、「これまでデータを取ったことがないので比較できない(原発事故による放射線の影響だと確定できない)」という、呆れた見解を政府が表明したばかり。水俣病の時代から半世紀、日本はなーんにも変わっていない。……と、政府をアテにしていては何も変わらない。じゃあ、どうしたらいいか? そのことへの答えを著者自身の被爆体験から訴えた本です。 何を食べたか。どう食べたか。天気はどうか。何を考えたか。新聞には何が書いてあったか。毎日を記録すること(……なんとなく、この「記録」は、ツイッターとかじゃダメな気がする。まともにノートに書かないと)。一人の日記じゃ脆弱すぎるけれど、1000、2000の記録が集まればそれは力となり「証拠」となる。 余談ですが、一無名人が書いた「ある明治人の記録」という本があるんですね。明治維新のとき戊辰戦争に負けた会津藩の一武士が、乞食のように菰に座らされて、当時、草も生えなかった下北半島に捕虜として移封された日々。明治維新=日本の明るい改革、と教科書で習ってきた身には、衝撃でした。名もない武士さんが綴った「日記」がなければ、政府の都合のいいように何が書き換えられたかも知らなかったと思います。 で、「都合のよいように書き換える」のは、政府の仕事みたいなもんだから百歩ゆずって目をつむるとしても、本当に恐ろしいのは、明治維新とは違って「何が真実か」を、今は政府自身も知らないようであることです。原爆を落とした米国がどれほど入念な調査を当時していたかが、本では綴られる。